書籍

船本洲治『黙って野たれ死ぬな』

山谷・釜ヶ崎で下層労働者解放に身を投じた船本洲治の文集。[新版]黙って野たれ死ぬな作者: 船本洲治,船本洲治遺稿集刊行会出版社/メーカー: 共和国発売日: 2018/06/30メディア: 単行本この商品を含むブログを見る以下、自分なりにかみくだいた彼のテーゼと…

『The Autobiography of Malcolm X』

マルコムXの自叙伝を読みました。1965年、彼が暗殺されるまでをカバーしています。実際に筆を執ったアレックス・ヘイリーによる、解題とも言うべき長大なエピローグと合わせて、非常にスリリングでむちゃくちゃ面白い本です。The Autobiography of Malcolm X…

Book of the year 2018: 森鴎外『渋江抽斎』

渋江抽斎 (岩波文庫)作者: 森鴎外出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2015/01/01メディア: Kindle版この商品を含むブログ (1件) を見る幕末期津軽家の江戸詰め家臣、医師にして考証家の渋江抽斎と、その家族を題材に、当時の読書人の世界を描いた話。抽斎に対…

カルロ・レーヴィ『キリストはエボリで止まった』(訳書2016年, 岩波文庫)

「暗黒の南イタリア農村」みたいな話かなあと思っていて、それ自体間違ってはいないのだけど、むしろ貧しく悲惨な農村に魅惑される過程を描いた本でした。キリストはエボリで止まった (岩波文庫)作者: カルロ・レーヴィ,竹山博英出版社/メーカー: 岩波書店発…

ハンナ・アーレント『全体主義の起源』第三巻「全体主義」(大久保和郎, 大島かおり訳, 訳書2017年)

全体主義の運動・統治に関する論考の最後の分冊。1巻は「反ユダヤ主義」、2巻は「帝国主義」とそれぞれ題されているが、いずれも未読。3巻だけでもかなりたいへんな読書です。全体主義の具体例として、本書はスターリン時代のソ連とナチス・ドイツを取り上げ…

ハンナ・アーレント『エルサレムのアイヒマン: 悪の陳腐さについての報告』(大久保和郎訳, 訳書2017年)

アイヒマン裁判の報告。アードルフ・アイヒマンはナチス親衛隊 (SS) でユダヤ人の移送にあたった。潜伏先のアルゼンチンで拉致され、エルサレムで裁判を受けて死刑判決、同年刑死した。エルサレムのアイヒマン――悪の陳腐さについての報告【新版】作者: ハン…

オルハン・パムク『雪』(宮下遼訳)

「吹雪の山荘」ものの政治群像劇。「西欧」や「イスラム」や「神」や「世俗主義」や「失業」や「かつて社会主義だったもの」などの諸観念を、登場人物たちが言葉や実弾として投げつけ合う話です。読みでがあって面白い。雪〔新訳版〕 (上) (ハヤカワepi文庫)…

梁英聖『日本型ヘイトスピーチとは何か』(2016)

梁英聖『日本型ヘイトスピーチとは何か』(2016)を読了しました。タイトルは「ヘイトスピーチ」ですが、中身は現代日本におけるレイシズム全般を扱っています。自分の中でモヤモヤしてた部分について、きわめて明瞭に整理の方向付けをしてくれています。日本…

エミール・クストリッツァ『夫婦の中のよそもの』

大好きな映画監督エミール・クストリッツァが短編集を出しました。夫婦の中のよそもの作者: エミール・クストリッツァ,田中未来出版社/メーカー: 集英社発売日: 2017/06/05メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る雑然として騒々しい世界の中で、…

The book of the year 2016: カレル・チャペック『山椒魚戦争』

山椒魚戦争 (岩波文庫)作者: カレルチャペック,Karel Capek,栗栖継出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2003/06/13メディア: 文庫購入: 6人 クリック: 34回この商品を含むブログ (51件) を見る人間が奴隷としてこき使ってきた山椒魚が反乱を起こして世界終末戦…

ピエール・ブルデュー『資本主義のハビトゥス』

資本主義のハビトゥス―アルジェリアの矛盾 (ブルデュー・ライブラリー)作者: ピエール・ブルデュー,原山哲,Pierre Bourdieu出版社/メーカー: 藤原書店発売日: 1993/06/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 11回この商品を含むブログ (18件) を見るアルジ…

丸山邦男(1975)『天皇観の戦後史』、白川書院

天皇観の戦後史 (1975年)作者: 丸山邦男出版社/メーカー: 白川書院発売日: 1975メディア: ?この商品を含むブログ (2件) を見る著者はジャーナリストで丸山眞男の弟。『現代の眼』、『流動』、『創』といったアングラ雑誌を中心として掲載された、天皇制、と…

新崎盛暉『日本にとって沖縄とは何か』

日本にとって沖縄とは何か (岩波新書)作者: 新崎盛暉出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2016/01/21メディア: 新書この商品を含むブログ (5件) を見る1945年の沖縄戦移行、2015年の「オール沖縄」まで、沖縄の米軍基地問題に関する通史。ページ数の半分以上は…

ハンナ・アーレント『暴力について』

ハンナ・アーレントの論集『暴力について』(みすず書房、2000年、原著1972年)は、1969年〜1971年にかけて書かれた三つの論評「政治における嘘」、「市民的不服従」、「暴力について」、および最後の論評についてのインタビュー記事「政治と革命についての…

The book of the year 2015: アントニオ・タブッキ『供述によるとペレイラは』

供述によるとペレイラは… (白水Uブックス―海外小説の誘惑)作者: アントニオタブッキ,Antonio Tabucchi,須賀敦子出版社/メーカー: 白水社発売日: 2000/08/01メディア: 新書購入: 2人 クリック: 22回この商品を含むブログ (25件) を見るタブッキはイタリアの作…

水野直樹、文京洙『在日朝鮮人 歴史と現在』 (2015, 岩波新書)

近代以降の在日朝鮮人の歴史を概観した本です。日本の左翼運動、特に戦後すぐまでの共産党で、在日朝鮮人がきわめて大きな役割を占めていた、ということ。これは初めて知りました。「運動」の文脈においてすら、ちゃんと継承されていない歴史だと思います。…

酒井隆史『暴力の哲学』

暴力の哲学 (シリーズ・道徳の系譜)作者: 酒井隆史出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2004/05/21メディア: 単行本 クリック: 86回この商品を含むブログ (54件) を見る10年振りに再読しました。まとまった感想というものがないので、ツイートを引用してお…

Javaによる関数型プログラミング

Javaによる関数型プログラミング ―Java 8ラムダ式とStream作者: Venkat Subramaniam,株式会社プログラミングシステム社出版社/メーカー: オライリージャパン発売日: 2014/10/24メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (3件) を見るラムダ式を…

The book of the year 2014: Joseph Heller 『Catch 22』

Catch-22: 50th Anniversary Edition (English Edition)作者: Joseph Heller出版社/メーカー: Simon & Schuster発売日: 2010/10/26メディア: Kindle版この商品を含むブログを見る7-8年くらい挫折し続けて、今年Kindleの助けを借りつつようやく読み終えました…

『A Student's Introduction to English Grammar』

『A Student's Introduction to English Grammar』という英語の文法書を読みました。同著者の『The Cambridge Grammar of the English Language』という、より包括的な文法書を元にした、学生向けの本です。私が学校で習ったような伝統的な文法に対する批判…

中里成章『パル判事――インド・ナショナリズムと東京裁判』

パル判事――インド・ナショナリズムと東京裁判 (岩波新書)作者: 中里成章出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2011/02/19メディア: 新書 クリック: 25回この商品を含むブログ (8件) を見る東京裁判でA級戦犯全員無罪の意見を出したパル判事の評伝。筆者はインド…

The book of the year 2013: ジュンパ・ラヒリ『停電の夜に』

停電の夜に (新潮文庫)作者: ジュンパラヒリ,Jhumpa Lahiri,小川高義出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2003/02/28メディア: 文庫購入: 10人 クリック: 142回この商品を含むブログ (182件) を見るインド系のニューヨークの作家、ジュンパ・ラヒリの一作目、199…

アーネスト・ゲルナー『民族とナショナリズム』 (岩波書店, 2000年)

民族とナショナリズム作者: アーネストゲルナー,加藤節,Ernest Gellner出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2000/12/22メディア: 単行本購入: 7人 クリック: 85回この商品を含むブログ (54件) を見るナショナリズム論の定番らしく、大学の講義で書名は知ってい…

Book of the Year 2012: ガラスの街

ガラスの街作者: ポール・オースター,柴田元幸出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2009/10/31メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 34回この商品を含むブログ (37件) を見る今年はポール・オースターにはまりました。『孤独の誕生』以外は全部良かったけど、一…