『A Student's Introduction to English Grammar』

『A Student's Introduction to English Grammar』という英語の文法書を読みました。同著者の『The Cambridge Grammar of the English Language』という、より包括的な文法書を元にした、学生向けの本です。私が学校で習ったような伝統的な文法に対する批判的再検討を元に、新しい文法を提唱しています。とても面白かった。

A Student's Introduction to English Grammar

A Student's Introduction to English Grammar

本書の一番の見所は、前置詞・前置詞句の章です。従来副詞や従属接続詞などとして分類されていた多くの単語や用法を、本書では前置詞として分類しなおしています。

たとえば、次の3つの文(いずれも本書 7.2 [4] より引用)で、単語 "know" はいずれも動詞とみなされます。

  • "We know the last act." (名詞を取る)
  • "I know he died." (節を取る)
  • "Yes, I know." (何も取らない)

しかし、次の3つの文(同上)において、伝統的な文法では単語 "before" をそれぞれ従属接続詞、前置詞、副詞という別々のクラスに分類します。なぜなら、前置詞は名詞・名詞句 *1 を取るものとされるからです。

  • "We left before the last act."(名詞を取る)
  • "That was before he died." (節を取る)
  • "I had seen her once before." (何も取らない)

そりゃおかしいだろう、これは "know" のような動詞と同じように、同じ単語の様々な用例であって、別のクラスに属するはずがない。ってわけで、本書は上述の文例における "before" をいずれも前置詞とみなします。

同様にして、常に節を取る "because" や "provided," 常に何も取らない "downstairs" や "overseas" も、本書によれば前置詞です。

この他にも、「主語」の定義を意味論から独立したものとして再検討するところなど、読んで非常に面白いです。

*1:本書では "noun phrase" と一括されています。