The book of the year 2014: Joseph Heller 『Catch 22』

Catch-22: 50th Anniversary Edition (English Edition)

Catch-22: 50th Anniversary Edition (English Edition)

7-8年くらい挫折し続けて、今年Kindleの助けを借りつつようやく読み終えました。

フルメタルジャケットみたいな軍隊不条理劇で、これでもかというくらい狂った人物が、これでもかとばかりたくさん登場します。絶対に誰とも会おうとしない司令官とか、将官をしのぐ権勢をふるう「元」上等兵とか、敵味方問わずに軍需物資を手広く商売して、地中海沿岸各地の首長やスルタンや現人神に祭り上げられている食堂担当士官とか。

一番好きなところは、カーギル大佐が米軍慰問団のショーを見に行くように演説するところです。

「諸君」。カーギル大佐はヨサリアンの飛行中隊を前に演説を始めた。注意深く間合いをはかって、「君たちはアメリカ軍の将校だ。世界中、他のどの軍隊の将校も、そんな風に言うことはできない。考えてもみたまえ」。

ナイト軍曹は考えてみた。そして丁重に、大佐が演説している相手は下士官兵であること、将校たちは正反対の側で待機していることを伝えた。大佐はきっぱりと礼を述べ、満足のあまり頬をテカテカにして大股に歩き出した。自分の天才的な無能力が、軍隊生活の29ヶ月を経てもなまっていないことを、彼は誇りに思った。

「諸君」。大佐は将校たちを前に演説を始めた。注意深く間合いをはかって、「君たちはアメリカ軍の将校だ。世界中、他のどの軍隊の将校も、そんな風に言うことはできない。考えてもみたまえ」。しばらく考える時間をおき、「彼らは君たちのお客様だ!」といきなり叫んだ。「君たちを楽しませるために、彼らは3000マイルも旅してきたんだ。誰も見に行かなかったらどう思う?彼らの士気はどうなる?もちろんそんなことは、私の関知するところではない。しかし、今日君たちのためにアコーディオンを弾く女性は、君たちの母親でもおかしくない年齢だ。君たちのお母さんが、どこかの軍隊でアコーディオンを弾くために3000マイルも旅をしたのに、誰も見に来ようとしなかったらどう思う?あのアコーディオン奏者が母親でもおかしくないくらいの年齢の子供が、成長してそのことを知ったらどう思う?答えはひとつだ。誤解しないでほしいが、もちろんこれは強制ではない。君たちが慰問団のショーを見に行って素敵な時間を過ごすように、世界中のすべての大佐が命令したとしても、私が命令を下すことはないだろう。しかし私が望んでいるのは、君たち全員が、入院するほどの病気でない限り、今すぐに慰問団のショーを見に行って素敵な時間を過ごすことだ。これは命令だ!」

Joseph Heller『Catch 22』、3章

全編この調子の饒舌なナンセンスなので、単語の難易度のわりには意味が取れます。ナンセンスの意味が取れるってのはおかしいけど、意外と読めるってことです。

たぶんこの先、何回も読み返すことになるでしょう。