The book of the year 2016: カレル・チャペック『山椒魚戦争』

山椒魚戦争 (岩波文庫)

山椒魚戦争 (岩波文庫)

人間が奴隷としてこき使ってきた山椒魚が反乱を起こして世界終末戦争に突入する荒唐無稽なお話。『白鯨』みたいに(架空の?)百科事典を引いたり、新聞の切り抜きやらラジオ放送やら条約の文面やら、ガチャガチャで楽しい仕掛けです。

訳者解説は、同時代のファシズムを風刺する意図について云々していて、たしかにヒトラーらしき人物も登場するのだけど、全体としては明らかに植民地主義についての小説です。「山椒魚は文明の恩恵にあずかって幸せそうだし、我々は良いことをしているよね」みたいな、典型的なアポロジストも登場します。