The book of the year 2013: ジュンパ・ラヒリ『停電の夜に』

停電の夜に (新潮文庫)

停電の夜に (新潮文庫)

インド系のニューヨークの作家、ジュンパ・ラヒリの一作目、1999年の短篇集。日常的なできごとや一連の起伏を、抑えた筆致で緻密に描写する作品。登場する人物はインド系移民あるいはインド人なので、インド的なもの、たとえば印パ戦争に巻き込まれた家族への心配とか、移民的なもの、たとえばホームシックとか、重要な話題として扱われてはいるんだけど、普遍的な小説の形式へと完全に昇華されている。

こういうものを読むと、読者の自分まで叙情的で繊細になったような心持ちがするんだけど、それはたぶん気のせい。