ケレン味がないってこと

今日は正月場所の二日目で、北欧から来た二人連れと隣り合って話してたんだけど、遠藤がどうして人気なのか聞かれてすごく困った。ケレン味がない相撲、と答えたかったんだけど、「because he is handsome and ...」であとの言葉が見つからない。さいわい、今日の勢との一番が、まさにケレン味のない素敵な相撲で、すぐに分かってもらえた。

ケレン味がないってなんなんだろう。伊達公子さんのテニスについて、オザケンが同じことを別の言葉で書いてたはず。そう思って探したら「真っすぐな生のイメージ」だった。

そうなんだ、貴乃花貴花田貴ノ花だったころ、それから遠藤。ただ単に真っすぐな相撲ってんじゃなくて、ケレン味のない、「真っすぐな生のイメージ」。

たとえピッタリとする言葉が見つからなくたって、見ればすぐに分かるんだ。

止まるときは死ぬとき

かつての日馬富士も、真っすぐという点では貴ノ花や遠藤に引けを取らないけれど、彼は「生のイメージ」じゃないんだ。タガが外れてぶっ壊れるギリギリのスピードで真っすぐに突き破って、止まるときは死ぬとき、という感じ。

今の曲線的で技巧的な、老獪な相撲も好きです。日馬富士が円熟できるとは、思ってもいなかった。

朝青龍の円熟

朝青龍はとにかく速くて、強くて、ふつうなら無茶苦茶な技を仕掛けたって、危なくもなんともない。彼が進むあとから道理がゼーゼー言いながら追いかけて、追いついたころに本人はもう勝利の喜びに破顔一笑、大得意で花道を引き揚げている。

朝青龍白鵬に本割の相撲で勝てなくなって、新しいスタイルを披露したのは2010年の正月場所だった。おっつけで相手の差し手を殺して、ハズ押しで相手の上手を遠ざけて、とにかく相手のいいところを全部消して、なにもできなくしてから、一撃で仕留める。見事な優勝で、朝青龍の円熟ってこういうことかと感心も得心もしていたら、例の暴行事件であっさり辞めてしまった。円熟した朝青龍が見られたのはそのひと場所っきりだった。