神様がくれたチャンス

五月場所12日目の木曜日、10-1の同星で白鵬に挑んだ稀勢の里は、時間いっぱいの仕切りで二度突っ掛けて動転し、三度目の仕切りは一呼吸も立ち遅れて両差しを許し、まともに相撲を取らずに寄り切られた。

翌日は豪栄道を退け、今日は結びの一番、横綱日馬富士に五分に当たって、押して出る首根っこを横綱に押さえつけられ、左に開いて叩き込みが決まった、と思いきや物言いがつく。長い協議でさんざん焦らした末に、横綱が叩く際に髷を引っ張っていたとの裁定で、稀勢の里が勝ち名乗りを受けた。

これで稀勢の里は12-2、白鵬は13-1。明日稀勢の里が新横綱鶴竜に勝ち、白鵬が結びで日馬富士に負ければ、両雄の優勝決定戦となる。

稀勢の里はこれまで、当然優勝するべき場所を落とし、ここぞという一番を自滅で台無しにしてきたけれど、まともに相撲を取れば横綱をも一蹴するくらいの力があるんだ。今日は、不甲斐ない相撲で失ったはずの初優勝の望みが、もう一度戻ってきた。これは神様がくれたチャンスだと思う。力相撲で鶴竜を退けて、結びの一番に僥倖を期待したい。