『ガザを飛ぶ豚』

渋谷のユーロスペースで見ました。今回の上映はこの一回だけだったためか、たいへんな大入りで立ち見でした。

ガザ地区で漁師を営むパレスチナ人の主人公が、(ムスリムにとっても、ユダヤ教徒にとっても不浄な)豚を釣り上げてしまったのをきっかけに、ケガレにびくつきながらこいつを処分しようと試みたり、イスラエル人入植者を相手に種豚商売をはじめたり、自爆テロに巻き込まれたりするドタバタ喜劇。

という総括がむずかしい。「パレスチナ人」とか「入植者」とか「ケガレ」とかいった概念が、たえずひっくりかえされてまぜっかえされるから。なにしろ、主役のパレスチナ人漁師を演じたサッソン・ガーベイはイスラエル人なんだって。

笑いのすぐそばにトゲが、なにげないはずの日常に不条理が、あきらめの裏に希望があって、とても複雑な映画でした。