『ビッグシティ』

サタジット・レイ監督の1963年作品。シアター・イメージフォーラムで見ました。

コルカタ中流家庭の主婦である主人公が、経済的苦境をきっかけに、営業職として働き始める話。地味ですが、とても良い映画でした。

女性が職業を得るということが、基本的にはポジティブに描かれています。たとえば、主人公が家庭の中で従属的な地位を脱したり、雇い主と交渉し対決する勇気を得たり。

一方で、伝統的な価値観の中に生きている姑・舅や、元々は就職を応援していたはずの夫との関係がうまくいかなくなることも描写されています。これらは、対立され乗り越えられるべき障壁というよりは、現実的に付き合っていくできごととして扱われています。

あとは、ベンガル語と英語の二言語使用に関する描写が面白かった。主人公は当初英語を解しても話そうとはしないのですが、話が進むにつれ、イギリス人の同僚と英語でやりとりするようになります。また、ベンガル語の会話の中に、英語の単語やフレーズが紛れ込むところも面白かった。もしかするとこれは、ベンガル地域における言語使用の状況が、実際にこんな感じだ、というだけのことかもしれませんが。