米韓大統領記者会見でのオバマ氏の慰安婦問題への言及について

4月25日の米韓大統領の記者会見で、アメリカのオバマ大統領が慰安婦問題について言及しました。それについて、日本の政府高官が、「韓国側に言わされているのではないか」と述べた、という報道がありました。ホワイトハウスから記者会見の記録が出ているので、実際のとこどうだったのか見てみます。

以下、関連箇所を引用します。前半が朴氏の発言、後半がオバマ氏の発言です。

Q. 両大統領、ありがとうございます。

(略: オバマ大統領への質問)

朴大統領にも質問があります。あなたの国の悲しむべき喪失 (訳註: フェリー沈没事故) に弔意を表します。大統領、韓国と日本が、地域の安全保障上の利益を共有している中で、日本の第二次世界大戦における軍国主義的な過去についての激しい論争を克服する (訳註: get past) ために、あなたの政府は何ができると考えていますか?

オバマ大統領: (略)

朴大統領: 韓国と日本については、両国の間には数多くの共通の利益が存在します。しかしながら、両国の間には歴史観に起因する衝突が存在してきました。

あなたの質問は、こういった相違をいかに克服するか、ということでしたね。

まずは、あなたがソウルのフェリーの犠牲者について哀悼を表したことに感謝します。

この問題については、ハーグで韓米日の首脳会談を持ちました。私の論点は、この三者会談から始められます。したがって、私の話は、この三者会談から始められます。合衆国、具体的に言うとオバマ大統領には、ハーグ三者会談の実現のために多くの努力をしていただきました。この首脳会談では、北朝鮮核問題の解決について、協調努力するという合意に達しました。

しかしながら、三者会談の前に日本の指導者が行った約束について述べたいと思います。 (聞き取れず(ママ)) の談話 (訳註: 加藤談話か) と (聞き取れず(ママ)) の談話 (訳註: 河野談話か) まで、話はさかのぼります。安部首相は、この二つの談話に忠実にとどまること、そして韓国の慰安婦被害者の問題について、解決に向けて努力することを述べました。我々は既にいくらかの合意に達しているのですから、この流れを失わず、合意を基にして前進を遂げるべきです。

そして、私が最も重要だと考えることは、我々が安部首相の約束に立ち返って、日本の側から誠実な行動がなされることです。これは非常に重要です。慰安婦問題、そして韓国の被害者については、外務省の大臣レベルの協議がなされることになっています (訳註: there will be further consultations)。我々は、高官会議において議論がなされるということ、そして日本側から誠意が示されることを希望しています。我々が協力し続けられるために。もし今予測しているほどの前進が達成できなかったとしたら、我々がかつて実現 (訳註: realize) できた流れを基に、前進を続けることができなくなってしまうでしょう。

韓国の慰安婦被害者については、既に多くの方が逝去され、今では55人が生存しているだけです。ですから、これら被害者のために、我々が真摯な努力をすることは、とても重要です。もし我々が努力を放棄したら (訳註: let go of this)、近い将来に進歩が成し得なかったとしたら、これら被害者のために、何もすることができなくなってしまうからです。我々が築いた約束を基にして、その当時に得ることができた流れによって、前進は遂げられるはずです。三国間の協調努力は重要ですが、すべての関係者が努力するべきだと考えています。どの関係者の努力が欠けたとしても、前進は不可能になるでしょう。ですから、この点について、日本側で努力がなされることに、本当に期待しています。

Q. オバマ大統領に質問があります。(略: 北朝鮮の核開発について、ウクライナ情勢と絡めて質問)。

また次に、北東アジアにおける対立について伺います。北東アジアにおいて、韓国、日本、中国は、歴史上の領土に関わる紛争にもかかわらず、緊密な政治的協力関係を築いてきました。いかにして、協力のための友好的雰囲気を醸成するべきだと考えますか?そのためにアメリカは何ができますか?また、安部首相は、昨日の記者会見で、日本の政治的指導者たちの靖国神社訪問を正当化する声明を出しました。日本の政治家の歴史観に関するあなたの見解についてお聞かせください。

オバマ大統領: (北朝鮮の核開発、および東アジアの国際情勢について。9段落省略)

最後に、韓国と日本との間の歴史上の緊張関係 (訳註: the historical tensions) に関して述べます。我々の内で、たとえばここ韓国の慰安婦に起きたことに関する歴史を振り返る人なら誰でも、それがおぞましく (訳註: terrible)、著しい (訳註: egregious) 人権の侵害だったことを認めなければなりません (訳註: have to recognize)。これらの女性たちは、戦争の最中だったとしても、衝撃的な仕方で暴行を加えられました (訳註: violated)。彼女たちの声は聞かれるべきです (訳註: deserve to be heard)。彼女たちは尊重されるべきです (訳註: deserve to be respected)。また、起きたことに関する正確で明確な説明があるべきです。

安部首相も、またきっと日本の人々も、過去は正直に、公正に認識しなければならない (訳註: has to be recognized) ということを認識しているものだと、私は考えています。しかし、日本と韓国双方の人々にとって利益となることは、過去 (訳註: backwards) と同様に未来を向いて (訳註: look forward)、過去の心痛と苦しみを晴らす方法を見つけることだとも考えています。なぜなら、先程述べたように、韓国と日本の人々の利益は明らかに近接しているからです。両国はいずれも民主主義体制であり、いずれも発展した自由市場を持っています。いずれも発展する経済圏 (訳註: a booming economic region) にとっての土台 (訳註: cornerstones) となっています。いずれも合衆国にとって強力で友好的な同盟国です。また、韓国と日本の若い人々に思いを致すとき、私の希望は、我々が過去の緊張を率直に解決できるということ、また同様に、未来、平和の可能性、そしてすべての人々の繁栄に目を向けることができるということです。

戦争の恐怖からもたらされた最も重要な教訓は、私が考えるに、過去を振り返って教訓を学ぶことによって、将来の戦争を避ける事ができるということです。

Press Conference with President Obama and President Park of the Republic of Korea
  1. 一人の記者が慰安婦問題について朴大統領に質問し、朴氏が回答した。
  2. 次の記者の質問への回答の際に、前の朴氏の発言を受けて、オバマ氏も慰安婦問題に言及した。

という経緯だったようです。少なくともこの記録の限りでは、オバマ氏が「韓国側に言わされ」たということはないように見えます。